私評 曹豹 ソウホウ(ソウヒョウ)

曹豹は意外なところで人気のあるキャラである。その原因は光栄の三国志ゲームにある。とりわけ三国志IIにおいては、曹豹の能力値は武力も知力も魅力も最低なのである。いわゆる逆三冠王というやつである。

ただしこれはあくまで三国志演義によるものであり、正史では下の相をやっているくらいなので、能力は決して低くない。最近のコーエー作品は正史重視なので、曹豹の能力は高めに設定されている。コアな曹豹ファンには不満なようであるが、あれでいいのではないか。知力は相変わらず低いが、酔った張飛にケンカを売ったからと解釈できる。頭のいい人なら、いくら理不尽でも酔った張飛には逆らいません・・

なお、正史では「曹豹と張飛が喧嘩した」と書いてあるだけなので、曹豹に張飛が酒を無理強いしたのが謀反の原因だとか、曹豹の娘は呂布の夫人だったかは確認できない。どちらも二人の喧嘩を盛り上げるための演義による演出であろう。しかも、正史には「張飛は酒を飲む」という記述は全くない。張飛が酔ってトラブルを起こしやすいとはどこにも書いていないのである。個人の性格はかなり三国志演義による創作の色が濃いのである。

僕の考えるところでは、曹豹は陶謙の旧臣(ただし武官)の筆頭であった。そこに新参者の劉備が現れて徐州の実権を握ることになる。当時は劉備も呂布も流れの用心棒部隊のようなものであった。陳登の例を見ても、曹豹らにとっては「混乱した徐州をまとめられる人」なら誰でも良かったのである。が、曹豹にとって劉備は好ましい指導者ではなく、呂布を迎える考えもあったのではないだろうか。劉備を嫌ったから張飛と仲が悪くなり喧嘩したのか、張飛と喧嘩したから劉備が嫌いになり呂布を呼んだのかは定かではないが、それは「卵か先か鶏が先か」の問題であろう。

「義理知らず」と思うなかれ。民衆は混乱し、今の徐州をまとめられる人を欲しがっていたのである。「理想の国家」よりも「今日の飯」のほうが大事なのである。徐州の平和のために、強敵袁術と戦争状態にあった劉備を見捨てることはそんなに悪いことなのだろうか?

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